飛ばし記事:デザイン演説2014
2014年8月8日 MTG コメント (2)※注:この記事はマローが毎年行っている「デザイン演説」記事に似せて書いていますが、内容は全てフィクションであり何の関係もありません。2014年度目標に対する彼の評価と2015年度目標を予想し、彼の言いそうなことを書いてみただけの飛ばし記事です。要するに遊びです。
参考:
2013年→http://mtg-jp.com/reading/translated/mm/023500/
2012年→http://mtg-jp.com/reading/translated/mm/003801/
2011年→http://mtg-jp.com/reading/translated/001988/
毎年、同じ質問への答えから始めることにしている。「マジックのデザインにおいて、去年はどんな年だったか」。非常にエキサイティングだった。イニストラードの幻影に屈することなく、再びトップダウン・デザインを行った。愛すべきエンチャントや迫力の神々を送り出し、コンスピラシーという素晴らしい企画も成功を収めた。英雄の道なるイベントについても楽しんでもらったようだし、ハイドラとの対峙といった新しい遊びも提供できた。
2013/2014年のハイライト
何と言ってもコンスピラシーの成功が重要だ。たっぷりリソースを費やしてきたテーロスブロックの話ではないのが皮肉だが、しかしそんなことはどうでもいい位、コンスピラシーは素晴らしい企画だった。我々はドラフト、そして統率者戦でない多人数戦という未踏のデザイン領域にがっつり取り組み、結果的に好評を博した。いつか第二弾をやろう。
テーロスではかつて一般的であった大-小-小のブロック構成に再挑戦した。時を追いテーマの深化を見せ、荒れ狂うニクスの世界を描いていった。旅路の果てに非業の死を遂げた英雄エルズペスについて、彼女の足跡を辿りながら物語を追うと同時に芳醇なテーロスの世界を味わうことを楽しんで頂けたかと思う。
2013/2014年の教訓
基本セット2014において我々は新たな種族を生み出した。つまり…そう、「スリヴァー」である。伝統的なスリヴァーの姿形を大きく変え、ヒューマノイド型にしたのだ。基本セットにスリヴァーを戻すことに我々は興奮していたが、そんなものを吹き飛ばすほどにプレイヤー達の反発は凄まじかった。変化そのものを否定すべきではないが、しかしその度合いについては慎重さが必要であることを学んだ。プレイヤーの愛するものであれば尚更である。
さて細かい話はこれくらいにして、私が昨年打ち立てた目標について見ていこう。
2014年度目標#1:トップダウン・デザインの方法を理解していることを示す
テーロスは史上3回目のトップダウン・デザイン主導のブロックとなった。我々はマジックの世界に新しいギリシャ神話を再構築しようと試みたのだ。合否を判断する前に、まずは他の2つと比較しよう。テーロスはトップダウンとしてどうだったか?神河よりは上出来だったが、イニストラードを超えるにはまだ改善すべき点がある。つまり中間だ。(中間とは言え、神河からはずいぶんと距離のある中間地点なわけだが)
イニストラードという傑出した存在がある以上、比べられてしまうのは仕方のないことである。この問題は今後永遠に我々を悩ませるだろう。
(もう一つ今回から増える問題があるとすれば、「今後は少なくともテーロスを超えなければ、それは我々の作品としては失敗である」という、厳しいハードルを作ってしまったことだ。つまりイニストラードでもテーロスでも達成できていた水準はまぐれではないのだから、今後もそれを維持する必要がある。嬉しい悲鳴だ。)
では本題に戻る。我々はテーロスを作り上げる上であらゆる資料やイメージをまとめ、その肉を削ぎ落とし骨格となる部分を抜き出し、そこに新たな肉を付けたのだ。(名誉のために付け加えるが、この作業は神河でも行っている。方向性の問題だ)
果たして我々はトップダウン・デザインを再びうまくやれたのか?客観的に考えて、ぎりぎり不合格だ。確かにチームは良く働いた。英雄や怪物達はどれも素晴らしい出来だったし、神々は魅力的だ。百手巨人は何人ものプレイヤーを守ってくれた。よくできたセットだった───心から思う。しかし本当にプレイヤーはギリシャ神話の世界を体験できたのかというと、残念ながら必ずしもそうではないように思える。
人間と怪物との戦い。神との対峙。我々は描ききれたか?いや、まだやれることはあった筈だ。次のトップダウンの機会があれば、その時はもっとうまくやることを約束しよう。
2014年度目標#2:エンチャント・ブロックを作れることを示す
テーロスは史上2回目のエンチャント・ブロックだった。(1回目はかの悪名高き「アーティファクト・サイクル」ウルザブロックだ。)
さて、我々はエンチャント・ブロックを作れることを示せたのか?───合格だ。今度は間違えなかった。エンチャントの意味を問い、エンチャントの可能性を探り、エンチャントがよりエンチャントらしく振る舞えるよう細心の注意と最大の努力を注いだ。
たった1マナの微々たるオーラにでさえその居場所を与えた。授与で巨大な勇者を作らせることを推奨した。全体エンチャントのようなクリーチャー・エンチャントもデザインしたし、ひたすらエンチャントを並べる星座の戦術を成立させた。
それでいて、そのどれもが実にエンチャント的であり、エンチャントの領分を大きく踏み越えるものは無かったはずだ。
ミラディンのようなアーティファクト・ブロックと比べ明らかにできることは制限されていたが、その枷にも負けず新世界秩序にのっとり我々は魅力的なエンチャント・ブロックを作ることが出来た。
2014年度目標#3:メカニズムに再び生命を吹き込めることを示す
これには一つの問いでよい。すなわち、「信心は素晴らしかったか?」答えはイエス。よろしい、ならば合格だ。
今回我々は信心を始め、過去の失敗メカニズム達に新しいテキストやフレイバーを与えリメイクした。例えば信心は彩色、貢納は懲罰者カード、神啓はアンタップ・シンボルからそれぞれヒントを得ている。特に信心は神々の顕現条件として使われた事を差し引いても、実によくゲームに影響を与え、リミテッドにおいてもスタンダードにおいても常に意識され、プレイヤーにはもどかしさと達成の喜びを、対戦相手には恐怖を味合わせた。
イーブンタイドであまりにも不人気だったメカニズムがここまで愛されるように昇華できたのだ。これを合格と言わず何を合格と言おう。
合格2つに不合格1つ。昨年同様惜しい結果だが、悲観することではない。我々は常に新しい事に挑戦している。失敗メカニズムのリメイクのように、テーロスでの失敗はいつか必ず取り返し、諸君を驚かせて見せよう。
さて、それでは間も無く来たるタルキールの年について、目標を述べる。
2015年度目標#1:ボトムアップ・デザインにおいて物語を紡げることを示す
ここ数年を振り返ってみよう。テーロス、ラヴニカへの回帰、イニストラード、ミラディンの傷跡。これらは全て、トップダウン・デザインの傾向が強いものだった。テーロスはギリシャ神話を再現しようと試みた。ラヴニカへの回帰は過去最高人気のラヴニカ世界を。イニストラードはゴシックホラーを。ミラディンの傷跡はファイレクシアらしさを突き詰めていった。デザイン第5の時代と私は呼んでいるが、我々はこれらのセットの中で、可能な限りその世界の出来事を語ると同時に、そこを訪れるプレインズウォーカー達の戦いを中心に描いて来た。
さらにその前の年、言い換えると六ヶ年計画の最後の年であるゼンディカーは、まさにボトムアップなブロックだった。そして六ヶ年計画のいずれのブロックもボトムアップな発想から来ているものだ。
もう一つ重要なのは、この六ヶ年計画の中で我々は様々な世界の変化を描いてはきたが、その中において個々のキャラクターがどの様に振る舞い、戦ってきたかを詳しく描き切れてはいなかった。これはここ数年の物語重視なスタンスと明らかに異なる点だ。
さて我々はタルキールで、再びこのボトムアップ・デザインを採用する。さらに、ここ数年強化してきた物語の紡ぎ方を掛け合わせる。言わば過去と現在の手法の統合である。過去と現在……おっと、この話はまた次回だ。
2015年度目標#2:特殊なリミテッド構造が可能であることを示す
タルキール・ブロックは大-小-大の構成になっているが、そのリミテッド形式は第二エキスパンションのデューイまでと、第三エキスパンションのルーイ以降とで全く異なる。
前者はタルキール+デューイ、後者はデューイ+ルーイという組み合わせになり、言うまでもなくデューイが重要なセットになってくるのだ。
興味深いこの構成が果たしてうまく作用するかを、一年間を通して見ていこう。
タルキール・ブロックはブロック全体を通して先行デザインにかけた最初のブロックである。先行デザインとは通常のデザイン期間よりも先んじてデザインを進めることであり、それを初めて取り入れたのは神々の軍勢であった。つまりテーロスにおいてはブロックの途中からの導入となっていたのである。
タルキール・ブロックはそのブロック全体のデザイン時点から先行デザインを取り入れている。このリミテッド構造の成功は先行デザインの意義を見極めることにも繋がるだろう。
2015年度目標#3:多色のマンネリ化を打破する
ご存知の通り、最も最近多色を扱ったブロックはラヴニカへの回帰だった。テーマとしてはラヴニカへの再訪だったので、2色の組み合わせとしては2回目となる。
それ以前に多色をテーマにしたのはアラーラの断片、その前がシャドウムーア、さらに遡ると旧ラヴニカに行き着く。(シャドウムーアは開発視点で見ると多色ではなく混成だったのだが、プレイヤーは皆多色として受け止めていた。これは我々の目論見として大きな誤算であり、この後説明する)
我々は旧ラヴニカの後、2年間の小休止を挟み、久々の多色ブロックであるアラーラを華々しくリリースする算段だった。しかしその直前であるシャドウムーアが実質的な多色として扱われたがために、諸君は多色まみれの4年間を過ごすはめになり、市場は食傷気味であった。(プレイヤーに非があるのではなく、我々がこの問題を見抜けなかったことに全ての責任がある)
さて、今回ラヴニカへの回帰からたった1年の間を置いての多色環境となる。二の轍を踏みやしないか?それは分からない。再びマンネリ化を招くのではないかという議論も山ほどしたが、我々は新しい手法でもってこの問題を打破しようと試みており、今までとは違う切り口でテーマに取り組み、新たな地平を切り拓こうとしている。
また、タルキールは初めて対抗三色に取り組む大型セットだ。含みのある言い方をしたが、エキスパンションとしては遥か昔、アポカリプスが初めて対抗三色を扱ったセットだった。対して友好三色を最後に扱ったのはアラーラである。今回はこれらの前例とはまた異なる印象を与えられるよう心がけている。
加えて、今年度の製品リリーススケジュールは例年よりも全体的に前倒しにしている。近年増えてきた様々な他製品との調整の意味も多分にあるが、向こう一年のほとんどを多色だけで埋め尽くすことのないよう、マンネリ化を防ぐ一つの手段でもあると述べておく。
デザインの未来
それでは再び、また次回、『タルキール覇王譚』のプレビューが始まる日にお会いしよう。
その日まで、振り返るための過去と素晴らしい未来への計画があなたにもありますように。
コメント
あえて内容に触れると、テーロスはリミテッド環境がやや面白味が薄く、構築でも全体的に魅力あるカードが少なく感じています。そのへんマローがどう解釈しているのか気になります。
タルキールはタイムトラベルが非常に面白そうです。パラレルワールドというのは有りそうで、リミテッド構造の新鮮さと同時にトップダウンらしさも感じられそうです。
ゲーム内容に触れるのを忘れていました(テヘッ
リミテッドが大味だったのは意図的だったと思いますが、結果的に飽きさせてしまったのは反省点になるかと思います。それと構築では信心系が使われている反面、授与や貢納が思った以上に活躍していないのは問題視しているかなと。
ただ、ローテ後に輝くカードもあると思うのでこの一年だけでは評価しづらいかもですね。
タルキールはタイムパラドックスを用いたパラレルワールドって感じかなと推測しています。MTG的タイムトラベルがどんなものか、今から待ち遠しいですね!