タルキールのプレビューも中盤。個人的にはレアよりコモンの方が見たいのではよせいやと思っているのですが。
いずれにしても毎日楽しみですな。

さて最近気になっているのが、タルキールの翻訳ってすげー雑じゃねーかという話。
このセット、世界観を伝えるのがかなり大事な気がするんですが(元ネタがあるイニストやテーロスなんかよりね)、どうもそれがうまくいってない上にそもそも訳者の翻訳レベルが低いと感じる。

ドラゴンを龍と訳しているのは、好感が持てます。タルキールの世界を伝えるための手がかりなので。
しかし、そういう判断ができるのであれば、カードごとの訳にもその精神を持ち込んで欲しい…。
フレイバーは文章としての自然さが抜けているし、カード名はテンプレート訳になっていて意味が伝わらないのがちらほら。
(なんか戸田奈津子みたいなのが訳したんじゃねーの?とか疑っている。)

今回はそんな日本語訳についてツッコミを入れていきましょう。(9/9時点の公式サイトにあるカードのみ)
ちなみに単語の間違いはどちらかと言うとチェック体制の甘さに起因するミスなので、ネタにはするもののあまり気にしていません。



【明らかな誤訳】

Wingmate Roc/風番いのロック

WingとWindの誤訳。意訳にしてはちょっと不自然。ぶっちゃけ風のがかっこいいんだがね。

Sidisi, Brood Tyrant/血の暴君、シディシ

BroodとBloodの誤訳。意訳と呼べなくもないのだが、Sultai Brood = スゥルタイ群という訳が既に決まっているため退路は断たれている。



【そこそこの誤訳】

Mardu Heart-Piercer/マルドゥの心臓貫き
"Those who have never ridden before the wind do not know the true joy of war."
「風を背にして騎乗したことのない者は、戦争の本当の楽しみを知らぬ者だ。」

before the wind:風を受けて。「風を背に」では意味が分からない。

Sage of the Inward Eye/内向きの目の賢者

「心の目」だろ(百歩譲って「内なる目」)
ちなみに対義語としてoutward eyeで「肉眼」



【ニュアンス不足】

Sorin, Solemn Visitor/真面目な訪問者、ソリン

「厳粛な」「重々しい」「いかめしい」という、若干物々しさを感じさせる訳の方が近いだろうね。

Ugin’s Nexus/ウギンのきずな

アーティファクトなんだし「核」「深部」とかでいいんじゃないか?

Anafenza, the Foremost/先頭に立つもの、アナフェンザ

難しいね。Foremostは「先頭」と「最高位」のダブルミーニングでしょう。彼女がKhanかつ実際に先頭で戦うっていうことだね。
これを頑張って一語で両方表すか、それとも片方の意味を切り捨てるかは訳者の好みになるのだが、「先頭に立つもの」は中途半端では?
もし無理矢理両方表したいなら「先導者」「率いしもの」とか。
あるいは「先頭」の意味に焦点を絞るなら「最前線の」とかみたいなスッキリした訳のほうが好み。(Frontline Sage/最前線の賢者とかぶるが)

Rakshasa Vizier/ラクシャーサの大臣
Rakshasa offer deals that sound advantageous to those who forget who they are dealing with.
ラクシャーサは取引相手が誰であるかを忘れてしまった者にとって有利に聞こえる取引を提案する。

これって「甘言につられて、今目の前にいる取引相手(=ラクシャーサ)が何者であるかついつい忘れてしまう(=ラクシャーサは腹黒いのサ!!)」って意味かしら。わかりにくい…。



【日本語が雑】

Dragon-Style Twins/龍流派の双子
"We are the flicker of the flame and its heat, the two sides of a single blade."
「我らは炎の揺らめきとその熱、また1つの刃の両側の刃である。」

「刃」を連続で使うとは…。せめて一本の「剣」または「刀」で。

Frontier Bivouac/開拓地の野営地

「〇〇地」が続いている美しくない訳。
そもそもTemur Frontier = ティムール境なので、それにちなんで「辺境」あたりでイーンジャネーノ

Opulent Palace/華やかな宮殿
The dense jungle surrenders to lush and lavish expanse. At its center uncoil the spires of Qarsi Palace.
鬱蒼としたジャングルは豊穣で豊かな地へと移り変わる。その中心に伸びているのがカルシ宮殿の尖塔である。

「移り変わる」の意味が不明瞭だが、原文は「Jungleがその一部をSultaiに明け渡した」という解釈で良いのだろうか。
「豊穣」「豊かな」はどちらも「豊」が含まれるため、イメージが広がらずイケてない。前者を変えるなら「青々とした」「繁茂した」など。
また、後者のlavishは用例を見る限り「豊か」というより「豪奢」の方が近そうなので、その方向で訳すべきか。

uncoilは、まあ「伸びている」で仕方ないかなと思う。
Sultaiのナーガ(=蛇なのでcoilしている)の形状と対比(=uncoil)されているのだと推測するが、これを匂わせる簡潔な翻訳はちょっと思いつかない。

Flooded Strand/溢れかえる岸辺
Polluted Delta/汚染された三角州
Bloodstained Mire/血染めのぬかるみ
Wooded Foothills/樹木茂る山麓
Windswept Heath/吹きさらしの荒野

Where dragons once slept, their bones now rest.
Where dragons once prevailed, their bones now sink.
Where dragons once triumphed, their bones now molder.
Where dragons’ breath once burned, their bones now freeze.
Where dragons once roared, their bones now keen.

かつて龍たちが眠りについた場所には、今では彼らの骨が眠っている。
かつて龍たちが繁栄した場所には、今では彼らの骨が沈んでいる。
かつて龍たちが勝利した場所には、今では彼らの苔生した骨だけが残っている。
かつて龍たちの息が焦がした場所には、今では彼らの骨が凍りついている。
かつて龍たちが咆哮を轟かせた場所は、今では彼らの骨が風を切る音が響くだけである。

今回、翻訳が汚いと思わせるきっかけになった問題児。
原文は樹木茂る山麓が若干違うが、基本的な言い回しは同じ。
しかし日本語は語数や助詞に統一感がない。原文にない単語を入れているのはいいがそれが必ずしも雰囲気を補強しているわけでもない。
溢れかえる岸辺は、今も昔も「眠っている」で済ましている。とにかく雑。
元々が詩的なので、翻訳も沿わせるべきと感じる。
下はあくまで一例なのだが

かつて龍たちの寝床たる地に、今やその骨のみが眠る。
かつて龍たちの繁栄し地に、今やその骨のみが沈む。
かつて龍たちの掌中なる地に、今やその骨のみが苔生す。
かつて龍たちの焼き払いし地に、今やその骨のみが凍てる。
かつて龍たちの咆哮し地に、今やその骨のみが哀泣せり。


というような、ある程度の揃え方と簡潔さがあって初めて雰囲気が出るテキストと思う。
(溢れかえる岸辺は「かつて龍たちの眠りし地に、今やその骨のみが横たわる」と迷ったが、日本語だと「眠る」=永眠のイメージが強すぎて。)
あとkeenは確かに難しかった。なんかうまい訳し方はないかな?



…そんな感じで、自分も英語は詳しくないもののそもそも日本語がおかしいので、気になった次第でした。

コメント

Zirilan
2014年9月9日6:38

日本語のカードをあまり見てなかったので気づきませんでしたけど、こんなに色々あったのですね。
フェッチの訳も違和感があったので、そちらの訳の方がしっくりきました。
興味深い記事だったので、リンクさせていただきました。よろしくお願いします。

分倍河原
2014年9月9日9:37

> Zirilan さん
コメントありがとうございます、こちらもリンクさせて頂きました。
自分も普段あまりじっくり目を通したりしないのですが、これまでのセットでは違和感を感じることが無かったからかもしれません。ちょっと今回はひどいかなーと思ってます。特殊な用例とかじゃなく、辞書で上の方に出てくるレベルのものが間違ってたりするんですよねー…。
フェッチがこのセットの目玉商品ですから、せめてここだけは本気で訳して欲しいなあと思いました。

莱亞りう
2014年9月9日13:32

シディシについてなのですが、「プレインズウォーカーのための『タルキール覇王譚』案内 その1」英語原文だと、「Sidisi, Blood Tyrant」となっています。元々は「blood」だったのか打ち間違いだったのかはわかりませんが、何か行き違いがあったのかもしれませんね…。

と、これはaisha氏のほぼ受け売りなのですが。

分倍河原
2014年9月9日14:15

>莱亞りう さん
コメントありがとうございます。一応aisha氏の発言は存じ上げていますが、カード名の翻訳で見ると誤訳だよなぁ、と思い、掲載しています。

…とはいえ、どのタイミングで「Blood」→「Brood」になったのかで判断も変わるのですがね。訳したあとに原文を変えられてしまったら、訳者はどうしようもないですからね…。
補足頂きありがとうございました!

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索